不動産のデジタル化で住宅の「メディア化」を目指す、スタイルポートの現在地
「ROOVによってお客様の業務フローが変わったと聞くと、我々が提案したソリューションがお客様の事業の中にうまく組み込まれたんだと感じてガッツポーズが出ますね」。そう話すのは、スタイルポート取締役の堀井秀雄です。前職のコンサルティング会社で役員候補となるも、さらなる成長を求めてスタイルポートへ。将来的に、ROOVで住宅の「メディア化」を目指すと言う堀井に、スタイルポートの現在とこれからについて聞きました。
前職時代の盟友のビジネスセンスに賭けた
——前職では20年以上コンサルタントとして活躍していたそうですが、そこからなぜスタイルポートへ転職しようと思ったのか、教えてください。
当時は商業施設開発や施設運営のコンサルティング企業に勤めていて、そこで役員になる話がありました。そのとき45歳だったんですが、役員は60歳で役職定年を迎えます。残り15年で何をどう成長させられるのかと思ったときに、自分のキャリアに行き詰まりを感じました。
スタイルポート代表の間所さんから「これから事業を成長させたいし、社員も増やしたい。マネジメントしていく段階に入っていくので、力を貸してくれないか」と声をかけていただいたのは、そんなときです。
間所さんと知り合ったのは、お互いの前職時代。間所さんはデベロッパー、僕はコンサルという立場で1つのプロジェクトに取り組み、まったくの更地状態からマンションと商業施設を開発・運営したご縁で、その後間所さんが独立して会社を立ち上げてからも年に1〜2度は食事するような間柄が続いていました。
当時のスタイルポートでは、マンションを引き渡す前に不具合がないかチェックしたり、内覧会に立ち会ったりといったCS事業を中心としていました。そんな中、間所さんが本当に楽しそうにROOVの構想を語っていたんですよ。
僕はテック領域はまったくの素人だったんですが、前職で彼のビジネスへの情熱とセンスを目の当たりにしていたので、そこに賭けてみようと思いました。
ただ、前職で生え抜きの役員候補が僕だけだったこともあり、社長を説得するまでに時間がかかりました。お前が抜けたらどうするんだと。1年ほどかけて退職交渉をして、スタイルポートに入社したのは2017年1月です。
ROOVが起こす業務変革を目の当たりにできる
——クライアント企業の特徴を教えてください。
我々の主戦場が新築マンションなので、現状はマンションデベロッパーに特化していますね。
基本的にほぼインバウンド──紹介と当社のホームページからの問い合わせですね。一般的に不動産業界は新規営業のイメージが強いかと思いますが、我々が携わる不動産領域はBtoBがメイン。1棟50億〜200億円といった単位の投資ができる企業に限定されます。
町の不動産屋さんのような、賃貸住宅や土地建物の仲介・売買とは異なる領域なので、不動産とはいえテクノロジーに振りやすいという特徴があります。
マンションを建てるには、宅地建物取引業法に則り、耐震構造や防火性能が法律の基準を超えているかなど行政機関への建築確認申請が必要です。その許可が下りてから着工するんですが、この着工の前後で物件の担当者が確定します。
その後、担当者が広告代理店を選定して市場調査をし、価格帯や広告の企画を立てていきます。ROOVはそうした広告企画の段階から参入していくので、まずは販売の担当者が決まるタイミングを見計らって商談を進めています。
デベロッパーによっては物件の売り出しが決まれば、必ず連絡をくださることになっているケースもあります。例えば野村不動産さんは、全物件でROOVを導入するご契約をいただいているんです。物件の着工が決まれば先方から連絡が入るようになっていて、その際に担当者が誰なのかも教えていただく流れになっていますね。
ですから、営業といっても受注がほぼ確定している状態で商談を進めることが多いですね。
——堀井さんが仕事でワクワクしていることは何ですか?
ROOVを導入することで、お客様の販売方法や業務フローが変わるケースがいくつかあるんです。これは、我々のソリューションが、実際にお客様の事業の中にうまく組み込まれたということ。そんな話を聞くとガッツポーズが出ますね。
それこそ3年前までは、紙のパンフレットで物件を販売しているデベロッパーがほとんどでした。ですが今後は人口が減っていきますし、マンション購入希望者の多様なニーズに応えようとすると、接客できる件数も限られてくる。DX推進は必須なんです。
マンション探しの動線も大きく変化しています。先日行ったアンケートでは、回答者の97%がYouTubeやInstagramで物件を探していると回答しました。
時代の変化とともにマンション購入希望者も変化している。その変化にデベロッパーがどうアジャストするかは非常に大きな課題。でも逆にいえば、そこにアジャストすることで効率化できるはずなんです。
ROOVを使ってお客様の来場前にたくさんの情報を与えれば、商談時間が短縮できる。そうすると、1日に接客できる件数が増えます。
実際にデベロッパーさんから、「お客様の質問数が減りました」「帰宅後にROOVを見ながら検討してもらえるのはありがたいです」といった声を聞くと、これぞまさに我々が目指してきた世界だと感じますね。
さまざまなバックボーンを持つセールスパーソンが活躍
——スタイルポートでは週1回出社する以外はほぼフルリモートです。そうした環境で、メンバーとコミュニケーションを取るときに意識していることはありますか?
slackでやり取りする際に、できるだけ速くレスポンスすることは心がけています。あとは隔週でマネージャーと1on1をして、メンバー個々の動きで気になる点や進捗の確認をしたり、マネージャーから何か提言があればそれを確認したりしています。
チーム内では、大きくデベロッパーごとに担当を分けています。成功体験の共有は密にしていて、どんなふうにルートを切り拓いたかといったノウハウの共有をお互い確認していますね。
新しく入社したメンバーに対しては、3ヶ月ほどを目安にオンボーディングのワークフローを組んでいます。アポ取りをしたり、商談に同席してもらったりを繰り返して、徐々に業務を覚えてもらう形をとっています。
——スタイルポートではどんな人が活躍できると思いますか?
素直さと行動力がポイントです。
不動産×テックという、業界自体が新しく、ROOVのようなツールを使って不動産を売ろうという風潮そのものも、ここ1〜2年で生まれてきました。そうした意味で、業界もスタイルポートもまだまだ成長フェーズだと思っています。
だからこそ、いかにお客様の声や社内の意見を真摯に受け止め、素直に吸収し、自分なりに咀嚼したうえでアウトプットができるか。そのサイクルを上手に回せて、かつ行動力がある人はパフォーマンスが出しやすいのではないかと思います。
行動力という意味ではアウトプットの量と、情報をキャッチアップする能力。それらの能力の高い人がパフォーマンスを発揮しているという相関関係がありますね。
メンバーのバックボーンはさまざまで、成績トップのセールス担当は前職でメーカーの経理をしていました。彼は営業がやりたくてメーカーに入社したそうなんですが、経理に配属されてしまった。スタイルポートでは未経験でも営業ができるからと転職してきたんですが、入社1年でNo.1になりました。
その彼を誘ってくれたのが、もう1人のセールスのエースです。彼はもともと証券会社で営業をしていたんですが、もっとクリエイティブな働き方がしたいということで、スタイルポートに興味を持って入社してくれました。
セールスの内容がソリューションの提案・提供なので、業界の慣習はあまり関係がない。かつ、BtoB向けの商材なので、不動産業界の深い知識も必要もありません。ですから、出身業界は問わず採用していますね。
戸建て領域にも進出し、住宅全般の「メディア化」を目指す
——スタイルポートの今後の展開について、どんな構想を持っていますか?
今後は現在のマンション事業領域主体から、戸建て領域に広げていきたいと思っています。
注文住宅を建てたい場合、一般的には工務店やハウスメーカーに行って図面を書いてもらい、契約をして進めていきますよね。この工程をもっと効率化することが狙いです。現状で一定の評価が得られそうな形になってきたので、いよいよ本格的に動いていこうというフェーズです。
現在、新築マンションは年間で7万〜8万戸が建設されています。一方、新築戸建ては約4倍の28万戸。そのうち16万戸が注文住宅です。
こうした年間何万戸という単位の新築戸建ての情報をデータベース化してAIを駆使すれば、たとえば「海が見える丘」「駐車場は2台」「家族4人でこんな暮らしがしたい」といった条件に合致した建築プランを探して提示することができるかもしれません。
建築プランと土地の情報をマッチングして販売したり、ハウスメーカーを選定したりすることもできるはずです。
デジタル化がもたらすメリットは、消費者にだけでなく、ハウスメーカー側にもあります。
ハウスメーカーが住宅展示場に出展する場合、年間で約1億円、さらに物件の建築費7千〜8千万円がかかります。最近ではマンションギャラリーも集約化されてきていますが、1つにはそうしたコストの問題があるんです。
たとえば本社が西新宿にある会社が、千葉県松戸市に戸建て住宅を建てるとします。でもその物件って、別に松戸で売らなきゃいけないわけじゃないですよね。新宿で売ったっていいはず。
ある大手のデベロッパーさんに、展示場やマンションギャラリーを集約化するのは効率化のためなのか聞いてみたことがあります。そうしたら、効率化より社員のモチベーションに関わるんだとおっしゃるんです。
どういうことかというと、その松戸の物件を例にすると、例えば横浜に住んでいる社員が、展示場のある松戸に1年間通うことになるわけです。西新宿に通うと思って就職したのに、松戸に通わなければならない。これは結構な苦痛ですよね。
集約化して新宿で販売できるなら、通勤の体力的な負担も軽くなるし、モチベーションが上がる。そうなれば接客もよくなるかもしれません。
そうした意味で、戸建て住宅を含む住宅全般の「メディア化」を目指しているんです。
——日本全体の大きな流れとして、人口減少や地方の空き家問題といった課題が顕在化しています。遠い将来、新築戸建てやマンションの数は減っていくのではないかと思うのですが、その点はどう考えますか?
一定の割合では減っていくのは間違いないと思います。
ただ、現在国内には余剰在庫が800万戸あると言われています。今後法整備が進めば、そうした余剰在庫は更地化が進むと思われます。そうすると、そこが新たな開発用地になっていくので、新築のサイクルは回っていくと考えています。
また、国内の働き手不足から、今後は海外からの移住者が増えてくる。そうなれば、常に住環境のサイクルは回ることになります。
それが新築であれ、中古であれ、我々は3Dデータを持っている。地図上のデータはGoogleを見ればほぼわかるのと同様、住宅の情報はROOVさえ見ればわかる世界を目指していきたいですね。