「第8回JAPAN BUILD TOKYO-建築の先端技術展-」セミナーにスタイルポートCTO木村が登壇 〜不動産業界の生成AI活用最先端についてディスカッション〜
こんにちは。スタイルポートのCTO木村です。先日、「第8回JAPAN BUILD TOKYO」の中で行われたパネルディスカッションに参加してきました。本記事では、パネルディスカッションで私がお話した内容と、その場で話しきれなかった事について捕捉を交えて紹介いたします。
イベントについて
第8回JAPAN BUILD TOKYO-建築の先端技術展
JAPAN BUILD TOKYOとは、建築・建設・不動産業界の課題を解決する最新の製品が一堂に出展する日本最大級の専門展示会です。
この中で行われた、GOGEN株式会社の主催セミナーである、「不動産業界の生成AI活用最先端!〜ChatGPT、AI画像で変わる業界の未来〜」に、パネラーとしてお呼びいただきました!
ワンストップ不動産売買手続き基盤を展開するGOGEN株式会社代表の和田様は、一般社団法人 不動産テック協会 AI推進活用部会 部長を担われており、ホワイトペーパー『生成AIが不動産業界にもたらす影響2023』を無料公開されています。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションでお話したかったこと
以下は、パネルディスカッションで私がお話した内容、伝えたかった事に絞って公開いたします。
テーマ:「みなさんはChatGPTを普段どのように使っていますか?」
ChatGPTに限らず生成AI文脈ですと、最も実用的で頻度も高いのがGitHub CopilotやAmazon CodeWhispererに代表されるようなエンジニアのプログラミングコードアシスタントです。さまざまなコードの提案を開発ツール上でリアルタイムで生成してくれるものですが、いわばプログラマの二番目の脳とも言えるべき存在になっています。この分野での実用的な進歩は物凄く、人間が書いたIssueを起点にAIが実装計画を示し、それに沿ってコーディングや既存のコードの修正を行い、ビルドをしてエラーがあれば修正まで行うコーディングのほとんど全ての工程をAIが自動的に実行してくれる、というものまで発表されています。
他に、生成AIは様々なサービスに組み込まれるようになってきており、日々恩恵を受けるチャンスがあります。一方で、実は生成AIの利用で失敗談があります。データに取り込むためのCSVを作る過程で、元データを行列変換して整形する作業を生成AIに任せたところ、ある一定件数以上だと精度が低くなり正しい結果を返さないという事がありました。生成AIで怖いのは、これをエラーとして返さず、誤った結果でも成功した風に出してしまうことです。この事に気づかずに誤ったデータ処理をしてしまい、問題になったことがありました。ここでの教訓は「生成AIは銀の弾ではない」ということですね。
テーマ:「不動産会社はどのように生成AIを活かして行くべき?」
様々なサービスのバックエンド処理に生成系AIが使われるようになってきているので、ドキュメント作業を中心にすでに恩恵を受けていることも多いと思います。ですので「これから生成系AIで何かをしたい」と考えた場合、ある程度の目的特化型で考えたほうが良いと思います。解決したい課題は何か?をしっかりと考えることが重要です。
解決したい課題が専門的で複雑になるほどLLM単体では実現できません。現実の問題を数理モデルとして定義し、制約条件を満たしつつ、コストの最小化や利益が最大化されるような変数の値を求める事が必要になるでしょう。
このように考えると、建築設計やレイアウトなど、ルールや制約がはっきりしているが、正解が一つではないような分野は梃子がききやすいと思います。ChatGPTのような優れた基礎モデルと数理最適化を組み合わせれば、建築設計士が行うボリュームチェックや図面の欠陥チェックなどが自動化できる可能性はあると思います。
テーマ:「ぶっちゃけ生成AIの登場で、自社の人間すらいらなくなりませんか?」
面白い質問です。世の多くのアンケートで「AIが仕事を奪う」と回答する結果が出ていますが、私はそれは誤った認識だと考えています。生成AIの特徴として以下が挙げられます。
汎用的であること - 基礎モデルの良さ
テキストや画像の生成、識別、要約、翻訳、コーディング、数学など、汎用的。
答えの理由がある - なぜAIがこれを勧めているのか?がわかる
ただ答えを返すだけではなく、答えの理由を人間が考えるように一つ一つ積み上げることができる。
自然な受け答え - 知性を感じさせる自然な受け答え
人が人と話すような自然さ。つまり、常識があるように振る舞える。
生成系AIの成功は、このような特徴によって人間とAIの距離が一気に縮まったことにあると思います。一方で、生成系AIが苦手とするものもあります。基本的には大規模言語モデルによってインプットされた時点での内容しか回答することはできません。「言語モデル」をベースとしているため、すべてを文章で制御しなければならず、正確な計算を行うためのものではありません。でてくる結果も「それらしい」という物になります。
そのため、本来人間が担うべきところをAIに任せてしまったり、AIの不十分な回答を鵜呑みにしてしまったりすることはトラブルに繋がる可能性があります。AIをパートナーとしてうまく付き合っていくことが大切です。
テーマ:「実は出したいけど出せていない生成AIを使ったプロダクトアイディア」
LLMに限らず広くお話すると、弊社はこれまで、3000タイプ、約3万戸相当の住戸を3D化してきました(2023年12月時点)。その圧倒的なデータ優位性から、大きく3つのチャンレンジを行っています。
図面から自動で3Dを生成する3D生成AI
建築設計士が行うボリュームチェック、建築図面の制作、CAD図面の欠陥チェックなど、設計業務を直接的に支援するAI
自然な会話からユーザーの潜在的なニーズを拾い上げ、個人ごとに異なる様々な条件を組み合わせて個々の物件へ最適にへナビゲートするようなコンシェルジュAI
実用化にはもういくつか技術的な山を超えなければなりませんが、我々のAIチームであれば実現できると思います。
テーマ:「5年後の不動産業界で起こっていそうな生成AIを用いた変革とは?」
進化する不動産業界では、パラダイムシフト、つまり改善ではなく、漸進的な変革が求められています。生成系AIは、物理的な建物中心のものから、ダイナミックで顧客中心の領域へと再構築される力があると思います。エクセルの登場で事務作業のあり方が根本から変わったように、生成系AIも同じインパクトをおこす可能性があります。特に設計系の業務パフォーマンスは劇的に変わるかもしれません。
例えば、建築設計士が行うボリュームチェック、建築図面の制作、CAD図面の欠陥チェックなど、設計業務を直接的に支援するAIが登場すると思います。設計図面や建設に関する各種規定やルールを生成AIに学習させれば、ビルや住宅の施工図や設計図面が自動生成されるような事ができます。他にも、建設欠陥情報や各種設計基準や規制基準のデータを学習させれば、チェック対象となる建設図面から図面上の欠陥を発見し、レポートを自動生成できるようになるでしょう。このように、建築設計の在り方、スピードの変革は比較的に早く訪れるのではと想像しています。
お礼
最後に、このようなチャンスを頂き、GOGEN株式会社 和田様には大変感謝いたします。一緒に登壇してくれた、株式会社LIFULL山崎様にも大変貴重なお話を聞くことができ、勇気づけられました。同じ業界を盛り上げていく同士として今後とも宜しくお願いいたします!
スタイルポートについて
スタイルポートは「空間の選択に伴う後悔をゼロにする。」をMissionに、「グローバルで利用される3Dコミュニケーションプラットフォーム」をVisionに掲げ、住宅販売の変革を目指し唯一無二の空間コミュニケーションプラットフォーム『ROOV(https://styleport.co.jp/roov/)』を開発、提供しています。
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